現在の舞鶴市岡田由里(オカダユリ)。明治17年当時、戸数 78戸、社2戸、総計80戸、人数 男164口、女162口、総計326口。
・出典 京都府地誌32~35加佐郡村誌1~4、京都府庁文書、京都府立京都学・歴彩館所蔵
村誌
丹後國加佐郡岡田由里(オカダユリ)村
本村往古ノ事詳ナラス、中古岡田荘ニ属ス、相伝フ古ヘ志託郷或ハ凡海郷ノ内ニ属セシト、然レトモ此郷名何レノ時カ廃絶シテ今詳ニ考フ能ハス、土人云フ、旧ト<西方寺・岡田由里・冨室>及本村ヲ総称シテ猪熊村ト称セシヲ何レノ時カ分裂シテ今ノ称ニ更ム
●疆域 東ハ同郡冨室・志高ノ二村ト諸岡陵ヲ以テ界シ、西南ハ地頭村ト山嶺ヲ劃リ、南ハ桒飼下村ト大雲川中央ヲ以テ界シ、北ハ河原村ト諸山嶺ヲ限リ、西北ハ西方寺村ト山嶺及耕地ヲ以テ界ス
●幅員 東西十八丁五十間、南北二十丁五十間、面積欠ク
●管轄沿革 円満寺村誌ニ同シ
●里程 京都府庁ヨリ西北方本村元標ニ達スル二十七里三十一丁八間余、宮津支庁ヨリ南方五里七丁三十八間余、四隣東志高村ヘ十九丁二十五間、西南地頭村ヘ十五丁三十七間余、西北西方寺村ヘ二十六丁九間二分<実測>、北冨室村ヘ九丁二十間<実測>
●地勢 三面山岳重畳シ、南方大雲川ヲ帯フ岡田川村ノ中央ヲ貫通シ、人家所々ニ散在ス、運輸稍便薪炭乏シ
●地味 其色淡黒沃地多ク稲粱ニ宜ク桑茶ニ可ナラス、水利ハ渓水多キヲ以テ灌漑極テ便ナリ、常ニ旱損ナキモ却テ水溢ノ患アリ
●税地 田<三拾六丁七反拾九歩>、畑<五丁四反七畝拾四歩>、宅地<壱丁四反三畝弐拾六歩>、山<反別欠ク>、薮地<四畝拾五歩>、総計<四拾三丁六反六畝拾四歩>
●字地 仲ノ森<村ノ北ニアリ、東西六丁三十間、南北三町二間>、安田<同上、東西七丁四十七間、南北四丁四十五間>、荒張(アラハリ)<同上、東西三町十間、南北一丁二十間>、由里ノ谷<同上、東西五丁五十間、南北三丁四十間>、平田(ヒラタ)<同上、東西三丁二十間、南北五丁二十間>、瀧<同上、東西五丁五十間、南北七丁十間>、下市<本村北方元標ノ地ヲ云フ、東西七丁三十間、南北四丁>
●貢租 地租<金六百四拾八円壱銭四厘>、山税<金八拾四銭壱厘>、国税<金四拾三円八拾弐銭三厘>、府税<金三円廿五銭>、総計<金六百九拾五円九拾弐銭八厘>
●戸数 本籍七十八戸<平民>、社二戸<村社一座、無格社一座>、総計八十戸
●人数 男百六十四口<平民>、女百六十二口<平民>、総計三百二十六口
●牛馬 牝牛二十二頭
●山 安田山<高凡六十丈周回欠ク、村ノ西ニアリ、嶺上ヨリ三分シ、西ハ地頭村ニ属シ、北ハ西方寺村ニ属シ、東南ハ本村ニ属ス、山脈宇ノ尾ヶ嶽ニ連ル樹木欝葱、登路一条、本村字安田ヨリ上ル昇リ六丁易ナリ>、愛宕山<高凡五十四丈周回欠ク、村ノ東北ニアリ、嶺上ヨリ四分シ、東ハ志高村ニ属シ、東北ハ冨室・河原ノ両村ニ属シ、北ハ西方寺村ニ属シ、南ハ本村ニ属ス、山脈由良ヶ嶽ニ亘ル、樹木茂生ス、登路一条、本村ヨリ北ニ向テ上ル昇凡四町険ナリ>
●川 大雲川<二等河ニ属ス、深所三丈、浅所五尺、広所七十間、狭所三十間、清ニシテ緩、舟茷常ニ絶エス西方地頭村界ヨリ来リ、東方志高村界ニ入ル、長六丁七間>、岡田川<深所五尺、浅所七寸、広所八間余、狭所七間、清ニシテ急𦆵ニ桴茷ヲ通ス、西方西方寺村界ヨリ来リ本村字江﨑ニ至リ、大雲川ニ入ル、長三十四丁五十四間>、冨室川<岡田川ノ支流、広所一間五尺、狭所一間四尺、水浅流急ナリ、北方冨室村界ヨリ来リ、西流シ岡田川ニ入ル、長六丁四十三間>、大橋<福知山往還ニ属ス、架シテ村ノ西方岡田川下流ニアリ、橋長七間、巾三尺、木製>、松ヶ鼻橋<同上、架シテ村ノ西北岡田川下流ニアリ、橋長七間半、巾三尺、木製ナリ>、平田溝<岡田川分水ニシテ本村字長井ヨリ起リ、字平田・字細首等ニ至リ、九派ニ分シ、田九丁九反七畝七歩ヲ養ヒ、字追津ニ至リ、岡田川ニ帰ス、長十四丁十七間、巾三尺>、松ヶ鼻溝<同上、本村字松ヶ鼻ヨリ起リ、字南下・字庄ノ口等ニ至リ、数派ニ分シ、田拾丁五反六畝五歩ノ養水トナリ、字庄ノ口ニ至リ、岡田川ニ帰ス、長十二丁三十間、巾三尺>、瀧溝<源ヲ本村字瀧山ヨリ発シ、田壱丁弐反廿四歩ヲ養ヒ、字フタギリニ至リ、平田溝ニ入ル、長十四丁三十一間、巾二尺ヨリ三尺二至ル>、山杤溝<字山杤ヨリ起リ、本村ノ田九反三畝十五歩ヲ養ヒ、字千田ニ至リ、岡田川ニ入ル、長六丁四間、巾前ニ同シ>、安田溝<本村字安田山ヨリ起リ、田九反四畝拾壱歩ノ養水ニ供シ、字壱本松ニ至リ、松ヶ鼻溝ニ入ル、長十一丁、巾前ニ同シ>、枝宮上溝<冨室川分水ニシテ本村字枝宮ヨリ起リ、田二反一畝廿九歩ヲ養ヒ、字大橋ニ至リ、岡田川ニ入ル、長六丁九間、巾一尺八寸>、枝宮下溝<同上、本村字枝宮ヨリ起リ、田二丁四反四畝九歩ヲ養ヒ、字追津ニ至リ、岡田川ニ入ル、長一丁五十七間、巾前ニ同シ>
●道路 福知山往還<村ノ南方志高村界ヨリ西方地頭村界ニ至ル、長八丁十八間、巾一間>、宮津往還<本村元標ヨリ北方西方寺村界ニ至ル、長二十一丁三間一尺、巾一間>、般若寺往還<村ノ北方西方寺村界ヨリ東方冨室村界ニ至ル、長七丁五十五間四尺、巾五尺、本村字タヤ橋ヨリ東折シ、冨室村ニ通スル支道アリ>
●堤塘 岡田川堤<岡田川ニ沿ヒ、村ノ北方西方寺村界ヨリ本村南方字江﨑ニ至ル、長三十四丁五十四間、馬踏一間、堤敷三間、水量定杭長九尺、根堅メ所々ニ小竹ヲ植フ、修繕費用官民両途ニ属ス>
●社 氣比神社<村社々地、東西廿一間、南北廿間、面積三百四十四坪、村ノ北方ニアリ、氣比武彦命ヲ祭ル、創建年代詳ナラス、以下同シ、祭日十月十九日、境内末社二座アリ>、枝宮神社<社地、東西二十五間、南北二十六間、面積四百六十七坪、村ノ東方ニアリ、保食命ヲ祭ル、祭日十月十九日、境内末社四座アリ>
●古跡 古城墟<本村東北方字由利山ニアリ、東西二十二間、南北十二間、亀申形ヲナス、相伝フ、中古南部豊後ナルモノ之二拠ルト、同氏ハ元ト一色氏ノ麾下ニシテ本村ヲ領セリ、村民某傳フル所、同氏霊牌ノ裏面ニ、一ハ明応四年、一ハ弘治三年ト記セリ、然ラハ同氏ノ之レニ居ルハ此頃ナランカ、其他考証ノ拠ルヘキナシ>、廃寺址<村ノ北方字本堂ニアリ、土人云、中古此地ニ真言宗ノ巨刹アリシヲ何ノ時カ廃亡ス、此地傍近ノ字ヲ、南ノ坊・西ノ坊ト云ヘリ、然則往古堂塔支院ノ巍然タリシナラント>
●物産 生糸<六十二斤半>、與謝郡宮津市街ニ輸送ス
●民業 男<農・桑及ヒ採薪ヲ業トスル者七十八戸>、女<農業ヲ専トシ、傍ラ養蚕・製糸ヲナス者百十三人>