成生の「年中行事書上之覚」には、文化10年(1813)当時の年中行事がまとめられている。一番行事が多いのが正月、祝や○○初などの事始めなどが続く。元日には、祝い始めとして雑煮餅を食べ、氏神や寺へ初詣に行く。2日は、船道具の縄などをなう初、船乗り初、女性の縫い物初、苧(カラムシ)を長くより合わせて糸に績む初など、4日は漁方の綱仕事、縄なう諸道具作成の事始めである。6日の菜をつみ始めは、正月の初子の日に催された朝廷の遊宴行事「子日遊(ねのひのあそび)」の若菜摘みに近いものである。7日の雑炊初は七草粥と思われる。
11日の「作初」は、成生の別の文書に「田畑共少し起に菜を植る、作初と言ふ、是より作方をいたす」とある。「作初」は田畑を少し耕して菜を植える仕草をする、これから耕作をはじめる儀式である。この他、庄屋への寄合初で、今年の村での定め事を村人が決める初会合を行う。この日から農業と村の行政が始まるが、船や漁業の2日に比べると時期が遅い。
翻刻本文
「年中行事書上之覚」成生漁協文書A-27-3
正月分
一元日 早朝ニ何角等祝ひ始メ雑煮餅ヲ祝ひ、氏神ヘ参リ下向致ス、節会ヲ祝ひ寺ヘ参リ次第ニ村役人始メ年礼致ス
一二日 銭善船道具なひ初メ、船ろ初致ス、帰リ次第氏神様等相勤、女分ハぬひ初、苧うみ初致
一三日 休日
一四日 男分ハ漁方網し事と致ス、女分ハ漁方網なひ諸道具致
一五日 同断
一六日 なヲツミ初致ス
一七日 ぞうすい始メ祝、但シ休日半日、行者講致ス
一十一日 作初メ、庄屋へ寄合初メ、年内之村内定事ヲ致ス、大神宮講致ス
一十四日 家持之分寺ニ日待上ル、晩方枩飾リヲ取、但シ若者狐狩リヲ致ス
一十五日 朝かひヲ祝う、則かい正月と申、但シ朝正月の飾リを焼き払フ、此日休ミ
一十六日 寺参リ仏法初致ス
一廿四日 朝人毎愛宕ヘ参ル、則愛宕講致ス、半日休ミ
一廿八日 村祈祷日待ヲ致ス、半日休ム