余部上村の「作方年中行事」9月

 Twitter、#太郎左衛門のつぶやき、で記した農作業は、余部上村の「作方年中行事」(井上奥本家文書)を基にしている。太郎左衛門は、余部上村庄屋、文化10年(1813)7月に「作方年中行事」を藩に提出した。余部上村を中心に、西から久田美・青井・大山・成生・野原村の行事と比較し参考とする。また、旧暦なので約1ヶ月遅れの記事で調整した。

9月も年貢納入が続いた。


9月2日 9月に入って、桐実を拾い、帰って稲苅をする。その他、綿取、晩には干稲を取り込み、田畑の見廻りをして、田の畦に植えた大豆も収穫する。大川では5日頃から桐実の根苅をするそうだ。

9月4日 年貢の収納や大豆引は続き、昨日は小豆引だった。女は朝の一時ばかり栗をひろい、皮を取って水へ漬け、渋取りをする。秋のあいだの麦飯やゆりこ餅に交ぜて食べる。

9月6日 藩の蔵への収納、稲苅、干稲、綿取、牛の草苅、肥え持ちは続く。米の収穫が進んだので、昨日から麦田のこなしといって、土を細かく砕いて、大麦などを植える準備をしている。

9月9日 今日は重陽の節句、早朝氏神へ参詣し、村内各家でお互いに礼をする日だった。また城下町の朝代神社の本祭なので見物に出かけた。稲苅や上納米の作業はないが、休みではないので、田畑の見廻りはしている。

9月10日 今日は収納や稲苅、綿取、牛の草苅は行った。昼から半日休み、氏神の高倉八幡宮へ吉原町から振物と船うたいを奉納するので参詣した。高倉八幡宮は、長浜・和田・下安久・北吸・余部下・余部上の氏神だが、祭礼と別の日に吉原の奉納がある。

9月14日 今日は、半日休日で早朝は氏神へ参り、正月と同じように日待をする。日待は、講の仲間が神社に集まってお籠もりすることだが、他では集まる場合もあるとのことだ。菜や大根の手入をし、田畑の見廻り、牛の草苅、晩方には干稲の入込があるが、稲苅は終わった。

9月18日 上納米の作業や牛の草苅、晩の干稲の取り込みに加えて、最近は大麦を蒔いている。大麦は、青井では13日頃、久田美では19日頃から蒔く。青井では大麦の一種、裸麦を10日から蒔くようだ。裸麦は実と殻が離れやすく「むきやす」と呼ばれることもあるとのことだ。

9月22日 昨日から、厩の肥を出して、麦の上肥にしている。青井では7月17日麦の上肥用にしたき(下木)苅を行うそうだ。引き続き、大麦を蒔き、御上納米の準備、牛の草苅、田畑の見廻りは続く。

9月25日 昨日は半日休みだったが、年貢米の収納の他、大麦を蒔き、綿取、牛の草苅、田畑見廻り、晩に干稲の取り込みは続く。今日は大豆のかち(脱穀)も行った。
半日休みは、愛宕講のため他の村でも同じように休んでいる。

9月29日 昨日までは、上納米の準備と蔵への収納、引き続き大麦蒔き、こへもち、綿取、牛の草苅、干稲の入込だ。今日から、それに加えて、小麦蒔や灰まきなどが追加される。久田美では小麦を早めの9月16日に蒔くとのことだ。まもなく10月になる。

京都府立大学文化情報研究室・舞鶴地方史研究会「翻刻 作方年中行事・山論・献立・日露戦争」 京都府立大学文化遺産叢書16『舞鶴の地域連携と世代間交流 井上奥本家文書調査報告』160(1)-139(22)頁、2019

九月
朔日 右同断
二日 男女共桐実ひろい、帰りて稲苅、女綿取、或あせ大豆引、晩方干稲入込、田畑見廻り
三日 田すき、水さかり致、或男女共小豆引、又女ハ御上納米致、晩方干稲入込、女ハ牛之草かり
四日 御収納、田畑見廻り、男女共大豆引、女御上納米致、晩方に干稲入込
一此時ゟ女は朝壱時計、栗ひろい、かわ取、水へつけ、しぶ取、秋中麦飯并ゆりこ餅に交申候
五日 こへ持、稲苅、或麦田こなし、女綿取、或御上納米致、又ハ牛之草苅、田畑見廻り、晩方に干稲入込
六日 右同断
七日 稲苅り、田すき、田こなし、或ハ大豆引、女御上納米致、綿取、牛草苅、晩方に干稲入込
八日 右同断
九日 節句、早朝氏神江参り、田畑見廻り、村方互ニ礼致し、町祭礼見物に出候
十日 半日休、御収納相勤、残りハ稲苅、女綿取、或牛之草苅、昼ゟ吉原町ゟ高倉八幡宮江、振物并船うたい相懸候ニ付参詣致候「去申年之趣ニ而ハ取納ハ相済候積りかき入」(付箋)
十一日 こへ持、田すき、水さかり致、女ハ桐実ひろい、或ハ稲苅、牛之草苅、田畑見廻り、晩方に干稲入込
十二日 右同断、女御上納米致
十三日 右同断
十四日 半日休、早朝、氏神江参り、正月通り日持(待)致し、又男女菜・大根しやうやく、田畑見廻り、女牛草苅、晩方に干稲入込
十五日 大麦まき、女御上納米致、或綿取、牛之草苅、晩方に干稲入込
十六日 「御収納割直シゟ但し三番也」(付箋)、帰りて大麦まき、女御上納米致、田畑見廻り、晩方に干稲入込
十七日 大麦まき、こゑもち、女ハ御上納米致、或牛之草苅、晩方ニ干稲入込
十八日 右同断
十九日 右同断
廿日 御収納相勤残り大麦まき、女御上納米致、晩方に干稲入込
廿一日 男女共厩こへ出し、麦之うわこゑいたし、又ハ大麦蒔、女御上納米致、或牛草苅、田畑見廻り
廿二日 右同断
廿三日 右同断
廿四日 半日休、御収納相勤残り大麦まき、女ハ綿取、或牛之草苅、田畑見廻り、晩方に干稲入込
廿五日 大麦まき、或男女共大豆かち、女ハ御上納米、晩田畑見廻り
廿六日 右同断
廿七日 右同断
廿八日 御収納相勤残り大麦まき、こへもち、女御上納米致、又ハ綿取、牛之草苅、晩方に干稲入込
廿九日 小麦蒔、こへもち、はいまき、うわこへ置、或ハ御上納米致、田畑見廻り
晦日 右同断

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