余部上村の「作方年中行事」1月

X、#太郎左衛門のつぶやき、で記した農作業は、余部上村の「作方年中行事」(井上奥本家文書)を基にしている。太郎左衛門は、余部上村庄屋、文化10年(1813)7月に「作方年中行事」を藩に提出した。余部上村を中心に、西から久田美・青井・大山・成生・野原村の行事と比較し参考とする。これまで旧暦なので約1ヶ月遅れとしたが、年末年始の行事が多く1月の日付は新暦と同じである。

1月2日
元日から明日まで休日。昨日は朝7ツ時(午前4時)に起きて雑煮を食べ、村役人をはじめ、村中互いに礼をした。今日は、早朝に氏神へ参り、帰って寺へ礼に行った。明日は朝7ツ時前より藁を打ち牛の綱や面懸を作り年徳神へ供える。若菜を取って、町の鍛冶や町宿へ礼に行く。

1月7日
今日は七草で蕪菜の雑炊を作り、休日だった。久田美や大川も休日、野原や大山・成生では「ぞうすい正月」と言って雑炊をはじめる日とのことだ
。それ以外の日は薪を取りに行くが、雨天には家で藁仕事や田簔を作り、木綿の糸引を行う。

1月11日
今日は早朝から作り初の藁を3本植えて、これを早稲・中稲・晩稲とする。女は庭初をして、いかし・稗をいったものを臼でひいて昼に食べる。昼より庄屋所の寄合に行く。そのほかは薪を取りに行くが、雨天には家で藁仕事、木綿の糸引を行う。

野原では、朝大神宮講で、女は神へ備えた籾を挽き、これを産初といい、田畑を少し起こして菜を植える。青井では、こき初、はつたひ初で祝い、伊勢講を行うそうだ。

1月14日
今日は早朝に氏神へ参り、日待を行う。そのほかは同じで、薪を取りに行くが、雨天には家で藁仕事、木綿の糸引を行う。
青井・野原・大山・成生では、狐狩りを行うそうだ。成生では7歳以上の男子が2度回り、大山では15から30歳までの男が、夜8ツ時に村境の田畑を祝ってまわる

1月16日
昨日は休日、朝小豆粥を作り、村の中で各自礼を行った。今日は昼より仏法初といって念仏講を行い六斎を打った。
仏法初は、野原や成生では先祖の墓参りや六才講、六才打ち、大山では精進をして寺へ参り六才を打つ。青井では、寺ヘ参り、五穀成就の日待をするそうだ。

1月24日
今日は薪取りや麦の中打、雨ならば藁仕事、綿拵えをして半日休、夜に男は百万遍念仏をする。明日も同じ、夜に入って百万遍念仏、26日は休日、百万遍供養を行い、陰陽師に頼み村祈祷を行う。野原・青井・大山・成生では24日愛宕講、大山と成生は村祈祷で大般若経を読む

1月26日
彼岸前より彼岸中に麻苧を蒔き、茄子や多葉粉をふせ、牛蒡を蒔く。久田美でも彼岸前より床替え、茄子ふせ、黍・多葉粉・ネギの世話をする。明日から、こへ持ち、麦の中打、菜種の草取となる。久田美は夜から日待をしているので、早朝より信心するとのことだ。


京都府立大学文化情報研究室・舞鶴地方史研究会「翻刻 作方年中行事・山論・献立・日露戦争」 京都府立大学文化遺産叢書16『舞鶴の地域連携と世代間交流 井上奥本家文書調査報告』160(1)-139(22)頁、2019

一月
元日 休日、先朝七ツ時ニおき、雑煮を給、村役人初村中礼いたし候事
二日 休日、早朝氏神江参り、帰りて寺江礼致候事
三日 休日、朝七ツ時前ゟ藁を打、牛之綱又ハおもかい等致、年徳神備江、夫ゟ若菜取、町方鍛冶抔又町宿へ礼拵致候事
四日 町方鍛冶抔町宿江礼致、出町不致者ハ藁仕事、女木綿糸引
五日 薪樵、雨天ニ而ハ藁ニ而牛農道具致し、又ハ田みの致し、女木綿糸引
六日 右同断
七日 休日、七草、蕪菜雑水致し
八日 薪樵、雨天ニ而ハ藁仕事、又ハ田みの致、女木綿糸引
九日 右同断
十日 右同断
十一日 早朝為作り初藁三本植、是早稲・中稲・晩稲与致、女にわ初致、いかし・稗煎臼ニ而引、昼給申候、昼より庄屋所へ寄合ニ参り、其余ハ薪樵、雨天ニ而ハ藁仕事、女ハ木綿糸引
十二日 菜種之中打、或ハ薪樵、雨天ニ而藁仕事、又ハ田みの拵、綿一打、女木綿糸引
十三日 右同断
十四日 早朝氏神江参り、例年日持致し、薪樵、雨天ニ而ハ藁仕事、女木綿糸引
十五日 休日、朝小豆かゆ致、村方礼致し
十六日 薪樵、菜種之中打、仏法初ひるゟ念仏講致、六斎打申候
十七日 こゑもち、麦之中打、雨天ニ而ハ藁仕事・綿打、女木綿糸引
十八日 右同断
十九日 右同断
廿日 男女共薪樵、或麦中打、雨天ニ而ハ藁仕事、女木綿糸引
廿一日 右同断
廿二日 右同断
廿三日 右同断
廿四日 半日休、薪樵、麦中打、雨天ニ而藁仕事、女綿拵、夜分に男先例百万へん念仏申候
廿五日 男女共薪樵、又ハ麦中打、雨天ニ而ハ藁仕事、女木綿拵、男夜分に百万へん之念仏申候
廿六日 休日、百万へん供養仕、旦又堺谷村陰陽師頼、村祈祷致し
一春彼岸前よりひかん中ニ麻苧蒔、茄子ふせ、多葉粉ふせ、牛蒡蒔
廿七日 こへもち、麦中打、女ハ菜種之草取、雨天ニ而ハ藁仕事、女木綿糸引
廿八日 右同断
廿九日 右同断
晦日 右同断

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